3:災い転じて福と為す

 

 

 見るからに気味の悪い蔦に覆われた塔。その中に入った途端、ひんやりとした空気が私たちを包み込んだ。
 何か嫌な予感を思わせる、禍々しさを持った冷気。全身が強張るのを感じた。

「うわぁ〜、何だか不気味なところですねー」

「そうね。何が出てくるか分からないから、みんな気合を入れて……」

「おっ、こんなところに銀貨が。ラッキー」

「ふぅむ、ここを天然のお化け屋敷として入場料を取れば……ついでに全ての荷物を預かっておいて、万が一中で死亡したら、それをそっくりそのままいただいて……おぉ、これは大もうけが出来るぞ! よし、早速馬鹿な金持ちに招待状を……」

「あ、こんなとこにお花が咲いてる。どうですかぁ、似合いますかぁ?」

「あなたたち、いい加減にしなさい!」

 全く……私は頭を抱えた。仮にも勇者のパーティーがこんなのんきでいいのか、いや、いい筈が無い。これだけ危険を訴えてくる空気をこいつらは感じてないんだろうか。

「ここは魔王を倒すための伝説の武器がある塔なのよ。きっと凄い敵がいるはず……だから気を抜いてる場合じゃ」

 

 しゅるっ、そんな音が聞こえて、どこからともなく魔物の気配が現れた。
 ……そんな馬鹿な、さっきまで何も感じなかったのに……。

 私は剣を抜き、身構えた。目を閉じ、神経を集中させる――そこだ! 
 気配を感じた場所を剣で突いた。しかし、手応えは全く無かった。しまった、そう思った時には遅かった。

「勇者様、あ、足元!」

「きゃぁっ、な、なにこれぇっ」

 足を突然何かに絡め取られ、身動きが取れなくなった。何これ……触手? 
 どこから現れたのか、巨大な触手が私の手足を拘束し、持ち上げていた。手は上で一つにまとめられ、足は下着が見えそうなくらい開かされた。

 別の触手が股の間に入り込もうとしているのを見て抵抗を試みたけど、触手はビクともしない。

 

 このままじゃやばい、そう思っても、為すすべも無かった。持っていた剣は、とうに触手に奪われていた。

「やぁん、ど、どこ触ってるのよぉっ、あんっ」

 触手が鎧の隙間から潜り込んできて、私の全身を弄り始めた。ぬるぬるとした粘液が下着を溶かしていく。

「ひゃんっ」

直接敏感なところに触れられて、声が出てしまう。粘液のせいなのだろうか、体が熱くなってきた。

「あ、駄目、入ってきちゃ駄目ぇっ、むぐっ」

 口の中や大事なところにも触手が入り込んできて、出し入れを繰り返された。

 

「うぅっ、う、うんっ」

 快楽に理性を失いそうになりながらもどうにか周りを見ると、ミーティーもクームも同様の目にあっている様だ。

「ん、んんっ、んぁぁっっ」

「ぐぐぐぅっ、むぁぁ、はぁぁぁ」

 くぐもった二人の嬌声が、私をさらに昂らせる。あはぁ、もう一本入ってきたぁっ……やぁん、もう、いっぱいだよう……。

 そう思ってるのに、また別の触手がお尻の穴にも……うそぉ、やだ、お尻で感じちゃう……あ……大事なところに入っている触手とぐりぐり擦り合って……お尻、気持ちいい!! おま○こも、お尻も、ぜぇんぶ、気持ちいいのぉっ!

 

 ……私、もう駄目……。

負けちゃ駄目よ、私には使命が……理性の必死の叫びも、私には届かなかった。
 ……しめい? なに、それぇ……あぁぁ、もっと、もっと、ぐちゅぐちゅって、ぐりぐりってしてぇぇっ!!

私は完全に快楽に堕ちてしまった。もし口を塞がれていなかったら、どれだけはしたない言葉を口走ったことだろう。

 

 

「やれやれ、ここは私の出番ですかな」

 快楽を得ることしか考えられなくなってきた私の耳に、妙に冷静なアイバーの声が。

「はい、触手さん、そろそろ離してはいただけませんか」

 彼の声に、触手はピタリと動きを止めた。触手がブルブルと震えている……怯えてる? 
 まだ辛うじて残っていた理性が、触手から伝わるそれを感じ取った。快楽に堕ちた私はその振動さえも気持ちいいと感じていたけど。

 

 アイバーが一歩足を踏み出した途端、全ての穴から触手が一斉に抜けた。

「あぁぁっぁぁ、い、逝くぅぅぅっっっ!!!」

体が壊れそうなくらいの刺激に、私は絶頂を迎えその場に崩れ落ちた。

 

 

気付いた時には体に毛布がかけられていた。どうやらアイバーがかけてくれたようだ。他の二人も私と同様毛布に包まれていた。

「ありがとうアイバー」

 ある程度呼吸も正常になってきて、私はようやく正気に返った。
 もう少しで完全に堕ちてしまいそうだった自分の未熟さに、そしてその痴態をアイバーには見られていただろうことに猛烈な恥ずかしさを覚え、全身が茹蛸のように真っ赤になった。

「いえいえ、勇者殿、お疲れ様でした」

 

 ん?ここで私はある疑問を覚えた。どうして彼だけが無事だったんだろう。

「ねぇ、一つ聞いていいかしら」

「何ですか?」

「どうしてあなたには触手が絡みついてこなかったの」

「簡単ですよ。あの手の触手は大抵の場合男性恐怖症なんです」

「「「は?」」」

 私たち3人の声が重なった。

 

 ……と、いうことは。私の中に沸々と怒りが湧いてくるのを感じた。

「てことは、お前がもっと早く助けてくれたらこんなことにはならなかったってことじゃねーか、ざけんな!」

 パキパキと指を鳴らすクーム。

「あら〜、そーだったんですねー。それは……何かお礼をしなければなりませんねぇ」

 袋の中から見るからに危険そうなアイテムを引っ張り出してきたミーティー。

「残念だけど、ここでお別れのようね。目的の物も見つかったみたいだし」

 そして触手が居た場所に残されていた剣を上段に構えた私。

「少々困ったことになってしまいましたな。抜け身の穴!」

「「「待てー!!!」」」

「ははは、待っておったぞ勇者よ。ここが貴様の墓場に」

「うるさい!」

 ザシュッ!

「ぎゃぁぁぁぁあ」

 もう、いきなり話しかけるから、思わず切っちゃったじゃない。よく見ると、額には魔王との主従関係を表す印が。

「あら、もしかしてこの方、ここの番人じゃないんですか〜?」

「ほんとだ、こいつ凄いいっぱい金貨持ってるよ」

「そんなことはどうでもいい、目指すは悪徳商人の首のみ!」

 こうして私たちの命がけの鬼ごっこは朝まで続いた。

 私たちはアイバーを捕えた後、死なない程度にぼこぼこにしてから(HPはお情けで2程残しておいてあげた)逆さにして木に吊るした。

 

 

 しゅる……地面を何かが這う音がして、私たちはそちらを振り返った。そこには昨日私たちを散々苦しめた触手が。

 私は剣を抜き、二人を守るように一歩前に出た。

「あ。昨日の触手さんだ〜」

「なんだぁ? またあたし達に喧嘩を売りにきたのか?」

「待って……今のこいつからは悪意を感じない。……ふんふん、なるほど……」

 私は小さい頃から人間以外の言葉を理解することが出来た。といっても私に向かって話しかけてきたとき限定だけど。

「勇者様?」

「大丈夫よ、この子はもう私たちに危害は加えない。私たちについて来たいって」

 私は剣を収めながら二人を振り返り、にっこりと笑った。

「「??」」

 

 訳が分からないという表情を浮かべている二人に、私は説明した。

「なるほどな。勇者様が切ったあいつが前のマスターで、そいつを倒した勇者様がこいつの新しいマスターってことになるのか」

「うん。ちゃんとご飯を食べさせてあげれば無闇に人を襲うこともないみたいだし、味方にすればかなり心強いんじゃないかと思うんだけど……どう、かな」

 私は遠慮がちに聞いた。
 私たちを散々陵辱した相手を仲間に入れていいかと聞いているのだ。反対されても仕方ない。

 

「勇者様が仰ることに、私が反対するわけないじゃないですか」

「ま、確かにこいつかなり強そうだし、いいんじゃないか?」

 予想に反して、あっさりと承諾の返事が返ってきた。仲間っていいもんだと、この時初めて思った。

「夜の相手もしてくれそうですしね〜♪昨日すっごく気持ちよかったから、これからが楽しみです〜」

 ……前言撤回。

『ますたー、ぼく、がんばる』

 触手が話しかけてきた。何を、とは怖くて聞けなかった。

「お、そいつはいいな。よし、新しい仲間も出来たことだし、そろそろ出発するか」

 

「おーい、そろそろ降ろして下さいよ、あ、頭に血が……」

 頭の上から声がした。そういえば、さっきから声が聞こえないと思っていたら……。

「あ、いけない、アイバーのこと、すっかり忘れてた。アイバー、ちょっとは反省した?」

「はい、今回ばかりは私、心の底から深く反省しております」

「しゃあない、降ろしてやるよ。あ、待てよ。勇者様、この触手って、男性恐怖症なんだろう?だったらこの場で置いてった方がいいんじゃないか?」

 クームの言葉に、さっきまで真っ赤だったアイバーの顔から、一瞬にして血の気が引いた。逆さにされて顔を真っ青にしてる人ってかなり珍しいんじゃないかな。

『ますたーのなかまなら、ぼく、だいじょうぶ』

「私の仲間なら、大丈夫だって。だから、降ろしてあげていいわよ」

 こうしてパーティーに新しい仲間が加わった。

 

 

(萌雀投稿時タイトル:勇者どきどきダンジョン)

 




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